ファイルその1
2020年 某日 一都三県某商業ビル
現場属性:
建物全景の内、赤線範囲が今回のターゲットでした。
↑まず左から一枚目二枚目の写真、端部の爆裂、ハンマー等使わなくても手動で取れるレベルでしたので、乾かした後にシール材そのもので接着
三枚目、四枚目の写真はシール撤去した瞬間溜まっていた水が溢れ出すのですが、写真の写りでおわかりいただけますでしょうか。これは5分以上流れが止まらないレベルでした。おそらく鉄骨横臥材がレール状に水を溜め込んでいるパターンでしょう。これよりもっと凄い外壁湧き水の現場体験もあるのですが、それは又別の機会に。
↑ブランコ作業ですが、既存シールがバッカー入り完全二面接着ですので撤去は楽々でした。これが三面接着ウレタンシールだと足場作業の数倍以上はかかるでしょう。2倍程度では補正補足できません。人間が日常的に行っている身体作業のほとんどは無意識に体重移動(利用)を基本にしているのだ、ということを改めて実感させられます。これはスポーツや楽器の演奏フォームも同じ。経験上移動特性や作業性も含めて、ブランコ・ゴンドラについては4倍、脚立・立ち馬作業は2倍が通常足場作業に対する私の考える事情補正係数です。
ファイルその2
2020年 某日 一都三県某商業ビル
現場属性:
建物全景の内、赤線範囲が今回の漏水箇所でした。
一枚目の赤い下向き↓が部屋内に漏水箇所です。直上に張替え形跡のあるタイルがあるものでして、☓マークの二枚目と三枚目がそれです。前回の大規模修繕でひび割れ張替えはしたものの下地処理が曖昧かつ不適切だったのでしょう。本来ならタイル毎撤去し直して下地から見るべきところですが、建物全景のように建ぺい率MAX物件でございまして、公道直上作業ですので、カラーコーンの人払い程度はしてもハツリガラが飛ぶような作業はできないのです。なので、怪しい一帯のタイル目地を時間の許す限り塗膜防水的にシールすることになります。そして更に、これを変性シリコーンで塗膜をやってしまうと2年しか保ちませんので今回はシルバーのシリコーンをを使用しています。目地色が微妙に違いますが、4階上部なので道路上から見ても違和感はありません。
・
・
・
・
・
・
・
実は、タイル+連窓周りの打ち替えというのは結構鬼門です。話の延長として類似物件の写真をご覧下さい。
上記とは似通ったタイル+AW連窓の別物件です。
この物件も「大規模修繕が終わった頃に雨漏りが始まった」というナントモハヤな経緯で私が駆けつけたものです。
似通ってはいますが接近観察すると違いもあります。↓
一枚目ご覧頂きますようにタイル目地自体が「落とし仕上げ」になっています。
以上3つの部材は面一(ツライチ)になっていますが、タイルセメント目地だけが凹んでいる形状です。この場合は大変面倒くさいですがタイルセメント目地方向に(写真の場合、上部方向に)もう一抑えの細かいシーリングが必要なんです。そうでないと、シールとセメントの隙間からいくらでも雨水を呼んでしまうことになります。
二枚目の拡大写真の巣穴は極端で判りやすい例ですが、三枚目のような「テープ直下はみ出し硬化」の丸い端末部分も全く水密性が保証できません。
現場での具体的処方としてはメインの二液部分が硬化後同色の一液シールを持って細身の金ベラ等で「チビチビ」と抑えて行くしかありません。又そのような特殊経費は事前見積の段階で計上しておくべきです。
ファイルその3
タイルはタイルですが、この物件は雨漏りでは無くタイル浮きです。かなり状態の悪い物件なので建物外観自体を強めにモザイク処理しております。
一枚目 よく見ると真ん中は縦に膨れている状態
二枚目 下から見るとタイル部が山なりに膨れて剥落寸前の危険な状態であることがわかります。
三枚目 今回は諸条件を鑑み、ブランコによる緊急処置としては白系のポリエチレンテープで固めた上に皿板面から臨時に吊り込むような処置を採りました。
四枚目、五枚目は同物件のひび割れ部で比較的典型的なひび割れ症状ですが、先のような極端な「浮き症状」と「ひび割れ症状」が同一建物・同一面で併発するというのは珍しいことです。
外壁タイル面の劣化現象は大きく分けて2つの方向性があります。
一つは
「①元々くっついていたタイルが剥がれる」
という方向と、もう一つは
「②元々無傷のタイルが割れる(ぶつけてもいないのに)」
という2つの方向です。
①も②も一般的要因として「下地(躯体コンクリート)の挙動」により発生しますが、「その挙動自体」の原因こそを一歩踏み込んで考える必要があります。つまり、
a.コンクリートの経常的な体積収縮 (中期的に内発)
b.凍結融解、太陽輻射、風、地震、交通振動(短期的かつ環境的な外力)
c.構造物全体としての不同沈下 (長期的に内発)
が挙げられ、現実にはどの物件においてもaを主因としてbとcの副因が複合的に組み合わさり、タイル接着面に影響を及ぼし、「浮き」又は「タイル自体を割る」という劣化現象に至らしめると言えます。要因比重の順位としてはあくまで「a>b>c」であり、aは物件を問わずして一般的に起こることですがbとcは物件毎に起きたり起きなかったりするという一般属性もつけ加えておくべきです。
(その他考えられる遠因として「設備系等の熱作用」「微生物等の作用」が無くも無いのですが、普遍的一般論的に共通して起こるわけではないので一応省きます)。
つづく